日米進学通信

親子の信頼関係を築くには?

 日米では最低でも年2回の保護者面談を行っています。そして、毎回の面談の際に、多くの皆さんが口にするのが、お子さんの家庭での振る舞いに対する、不安や不満です。中には、「本当に自分の子供ながら信じられないんです!」という母上の悲痛な叫びとも思える言葉をお聞きすることもあります。今回は保護者の皆さんのこのような声を「教育コーチング」的な観点から考えていきます。

 「うちの子、本当に大丈夫でしょうか・・・?」

 まず、「うちの子、このまま行くと本当にまずいと思うのですが・・・」とか、「本当に何も考えていないんですが大丈夫でしょうか?」といった、お子さんの今後に対する不安です。不安が出てくるのは今の状態がこれからも続くと思ってしまうからだと考えられます。しかし、実際に続くことはありえません。というより、同じ状態が続いたというケースを見たことはありません。なぜなら、子供たちは本当に毎日成長し続けていて、1年どころか、特に受験期には1ヶ月で全く別人のようにかわることもあるからです。これは教育コーチングの「信念のトライアングル」における「人は育とうとする生き物だ」という点にあたります。(教育コーチング「4つのトライアングル」は新年度保護者会レジュメに記載しています。)子供は自ら成長しようとしているのに、その「成長の器」に透明な蓋をして成長を妨げているのは、不用意に発せられる「不安の表明」であるのかも知れません。どうしても、親は「タイムマシンに乗って悲惨な子供の未来を見に行くこと」をしがちです。そこで、「今をなんとかしないといけない!」と考えます。しかし、そこで親の目に見えているのは子供の短所ばかりです。子供は成長しているものの、やはり短所の矯正には時間がかかります。それで余計に焦りが焦りを生み、結局はうまくいかないという事態に陥りがちです。「育とうとする生き物」であることをどこまでも信じ、まずはお子さんの長所を見てあげて下さい。子供は1つでも自分に自信を持てることがあれば、大丈夫なのです。それを本人が自覚することができれば、子供は「自己肯定感」を失うことなく、成長していきます。

「なぜ、〇〇さんとこんなに違うんでしょうか?」

 次に、「兄弟、同じように育てているのに、全然違ってだめなんです」とか、「〇〇さんとほとんど同じような環境ここまで来たのに、何でこんなに差がつくのでしょう」などといった、他者との比較による焦りです。自分も二人の娘の子育てをしていて、比較をせずに子育てをすることの難しさは感じています。しかし、比較することからは何も生み出されません。それどころか、焦りを生み出すという意味では有害ですらあります。なぜなら、「人はそれぞれ」だからです。これも、教育コーチングの「信念のトライアングル」の一つです。人間にはそれぞれ、持って与えられた才能や能力があり、このことは残念ながら否定できません。だから、有名な「〇〇ママ」の子育て本を、そのまま実行したからといって同じ結果が出るなどということはあり得ないのです。お子さんの「子育て必勝本」を書けるのは、その子のお母さんだけなのです。他の方の事例を参考にすることはもちろん大切ですが、うまく行くこともあれば、いかないこともある。当たり前のことですが、意識していないと「不安の表明」と同様に、思わず言ってしまった「他者との比較」の言葉で、お子さんの「自己肯定感」を低下させると同時に、親に対する信頼感を失わせる契機にもなるのです。あくまでも、その子だけが持っている才能を信じて、周囲の声や「平均」に振り回されることなく、本人の力を伸ばしていきたいところです。

「最低でも〇〇中学には行かせたいんです!」

 最後に、「自分は最低でも〇〇高校くらいには行って欲しいのですが、本人は〇〇高校に行きたいと言っています。でも、どうしても行かせたくないんです。」といった親子の価値観のズレによる不満です。これは、高校受験に限らず、中学、大学入試でもあるお話しです。正直、自分がどうしても行きたい学校があると言える時点で、かなり立派だとは思うのですが、親の方がそれを受け入れられない。これは、自分の経験に基づく価値観や、実は「見栄」が原因であるように感じます。ここで、「子供を何とか説得してくれませんか?」という相談を受けることもあります。確かに、お子さんの主張が、単に情報不足による勘違いであったり、親への反抗心であったりすることもあるので、そこはしっかりと対応します。しかし、教育コーチングには「人は自分の中に答えを持っている」という信念があります。コーチングは相手が本当に考えていることを「引き出す」ものです。決して、自分が行って欲しい方向に誘導するものではありません。もちろん、本人が出した「答え」が正解であるとは限りません。(そもそも正解があるとも思いませんが。)ただ、様々な意見や経験をもとに自分が出した答えに沿って人生を歩んでいくこと、それこそが正に「自立」です。我々が目指すのは「受験を通じた自立支援」であり、保護者の皆さんが最終的にお子さんに望んでいるのは立派に「自立」することではないかと信じております。

 実はこのテーマの最後に、先日、10年以上前に日米を卒業した生徒のお母様が飛び込みでいらしたエピソードを書こうと思ったのですが・・・、これは、またの機会に!

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